「MBTIは何タイプですか、面接で聞いていいですか」
先日、研修先の人事担当者からそう聞かれた。新卒採用の面接でMBTIを聞くようになったら、現場から「うちもやろう」が広がっていて、今は面接シートにタイプの記入欄が増え始めているという話だった。
正直に言う。その使い方は止めてほしい。
ただ、就活生や転職活動中の人が自分のためにMBTIを使うのは、全然別の話だ。使い方によっては、自己分析の解像度が上がるし、「自分がどういう環境で力を出せるか」を言葉にする助けになる。問題は「誰が何の目的で使うか」であって、MBTIそのものの話じゃない。
就活生の61%がMBTI診断を自己分析に活用しているというデータもある(Synergy Career、2025年調査)。使う人が増えている分、「どう使うか」の話が必要になってきた。
就活・転職でMBTIが広がっている背景
大学生の80%以上がMBTIを知っていて、就活の自己分析ツールとして16Personalities(MBTI系の無料診断)を使うのはもはや一般的になっている。研修でこの数字を出すと、人事担当者のほぼ全員が驚く。就活生にとってMBTIは「自分の性格をざっくり言語化してくれるもの」として機能しているんですよ。
転職市場でも同じ流れがある。「自社のカルチャーとの相性」を明示する企業が増えており、価値観や働き方のスタイルを自分で把握しておくことの重要性が高まった。そこにMBTIが入ってきた形だ。
ただ、使い方が混乱している。「就活に有利なMBTIタイプ」を検索する人、診断結果をそのままアピールしようとする人、採用担当者がタイプを聞くケースまで出てきた。どこで使うべきで、どこで使わない方がいいのかを、一度はっきりさせた方がいい。
自己分析にMBTIを使うと、何が変わるか
まず、就活・転職活動における自己分析での使い方。大事なのは「タイプ名を知る」ことではなく、「自分がどういう環境で動きやすいか」の仮説を立てることだ。
E/I軸(外向型・内向型)は「充電の向き」を教えてくれる。
E型傾向が強い人は、人と話すことでエネルギーが補充される。I型傾向が強い人は、一人で過ごすことで回復する。これは「人が好きか嫌いか」じゃなく、充電の方向の違いだ。
就活・転職への翻訳で言えば、毎日クライアントに会いまくる営業と、個人で成果物を作るライター・エンジニアとでは、I型傾向の強い人が感じる消耗のレベルが全然違う。「好きかどうか」より「週5で続けられるか」の問いに、E/I軸が答えを出してくれる。
J/P軸(判断型・知覚型)は「処理の順番」を示している。
J型傾向の強い人は、先に決めてから動く。P型傾向の強い人は、動きながら決めていく。どちらが正しいわけじゃない。ただ、手順が固まっている職種とスタートアップや変化の激しい環境では、このJ/P軸と職場環境の相性が出やすい。
面接で「変化に柔軟ですか」と聞かれたとき、J型傾向の強い人が「柔軟です」だけだと薄い。「事前に計画を立てるのが得意で、計画が崩れたときの手順も先に考えておくタイプです」と言えると、J型の特性を強みとして語れる。
T/F軸(思考型・感情型)は「判断の基準の順番」を表している。
T型傾向の強い人は、論理・データを先に評価する。F型傾向の強い人は、価値観や人への影響を先に考える。どちらも必要で、どちらが優れているわけでもない。ただ、「この会社のミッションに共感できるか」を重視するタイプと「この仕事の成果指標が明確か」を重視するタイプでは、同じ会社でも刺さる情報が違う。
自分がどちら寄りかを把握しておくと、会社を比較するときの軸が変わる。数字と具体性で判断したいのか、理念と文化で判断したいのかを自覚することは、選択を早める。
人事・採用側がMBTIを使うと何が起きるか
ここからが現場で見た話だ。
研修を導入した企業の人事担当者から、「配属の参考にしたいのでタイプ別の傾向資料を渡してほしい」と相談を受けたことがある。評価には使わないという約束で、参考程度ならという条件で資料を渡した。
半年後、現場に行ったら「あいつは〇〇型だから任せられない」という言い方が定着していた。
悪気はゼロなんですよ、たぶん。「使いやすい補助線があったから使った」だけで、誰も意地悪でやっていたわけじゃない。ただ、一度タイプでラベルが貼られた関係は、そのラベルを剥がすのに時間がかかる。撤回と再研修に1年かかった。
MBTIの公式見解も、採用・選考・配属への使用は明確に禁止している。2020年発行の性格心理学の事典では「心理測定学的な裏付けがないと考えられ、批判されている」と記されており、科学的な根拠の面でも問題がある。
さらに、採用プロセスでMBTIのタイプを求めることは、職業安定法の観点から問題になりうる。性格特性に関する特定の情報収集が差別的な選考に使われていないかの説明責任が企業側に生じる。「面接でタイプを聞いた」「記入欄を設けた」は、その説明が難しい。
採用でMBTIを使うと何が壊れるかというと、「この人はこういうタイプだ」という前提が先に固まって、その人自身が見えにくくなる。タイプ論は観察の補助線だ。結論を先に出す道具じゃない。
就活・転職活動で今日から使える一手
で、明日から何をするかって話なんですが。
自己分析にMBTIを使う場合、一つだけ試してほしいことがある。タイプ診断の結果を「強みの証明書」ではなく、「環境との相性を確認する軸」として使うことだ。
具体的にはこう使う。志望する仕事や企業の特徴を、E/I軸とJ/P軸で簡単に評価してみる。
「その仕事の大半は人と会うことか、一人で作業するか」を見て、自分のE/I傾向と照らす。「業務は手順が決まっているか、毎回違う対応が必要か」を見て、J/P傾向と照らす。それだけで「なんとなく合いそう」が「どこが合っていてどこが消耗しそうか」まで具体化できる。
面接でも使える。「なぜうちに来たいのか」を語るとき、「御社の〇〇という文化が自分のI型的な働き方(一人で深く考える時間が生産性に直結する)と合っていると感じた」まで言えると、タイプ名をただ開示するより採用担当者に伝わる。
MBTIは、自分を分析する道具として使えば確かに使える。誰かを選別する道具として使ったら、それはもう別のものになる。就活・転職活動での使い道は、あくまで前者だ。
FAQ
面接でMBTIのタイプを自己PRに使ってもいいですか?
使い方次第です。「私はINFJです」だけでは情報にならない。「内向型の傾向があるため、一人で深く考える業務に集中しやすく、チームミーティングでは論点を整理してから話すようにしている」まで言えると、自己分析の一環として機能します。タイプ名より「自分がどう動くか」を語ることが大切です。
「面接でMBTIを聞かれた」場合、答えるべきですか?
答える義務はありません。ただ、答えても問題はない。注意したいのは、採用担当者がMBTIに詳しくない場合、タイプ名だけで判断されるリスクがある点です。答えるなら「〇〇型です。それが職場でどういう動き方につながるかというと」と、行動への翻訳をセットにするとリスクが下がります。
「就活に有利なMBTIタイプ」はありますか?
ありません。タイプによって有利・不利は決まらず、職種や企業文化との相性で話が変わるだけです。「有利なタイプ」を調べて診断を変えようとするエネルギーを、「自分がどういう環境で力を発揮するか」の言語化に使う方が面接に直結します。
企業がMBTIを採用基準に使っているか、事前に見分ける方法はありますか?
面接前に「選考過程で性格診断を使う予定がありますか」と確認することは問題ありません。使用している場合は採用ページや案内に記載があることも多いが、明示していない場合もあります。もし選考の中でタイプを強く求められた場合、その使い方が「参考」なのか「選別基準」なのかを確認する権利はあります。
転職活動中、職場環境との相性チェックにMBTIをどう使えますか?
求人票の「仕事内容」「社風」の記述をE/I・J/P軸で読み解くのがシンプルな使い方です。「チームで協力して成果を出す」はE型傾向に合いやすく、「個人裁量が大きい」はI型傾向に合いやすい。相性の仮説を立てて、面接で「実際はどうですか」と確認するための補助線として使う。これが一番現実的な使い方です。
参考文献
- 【調査レポート】MBTI診断が職業選択に影響する就活生は39%|61%が自己分析に活用 — 株式会社Synergy Career(プレスリリース)
- 流行の「MBTI」採用にも使われる? 向き合い方を考える — 朝日学情ナビ
- MBTI診断を採用に使うのはOK?危険? メリット・リスク・法的注意点を徹底解説 — 株式会社Dots
- 採用活動でMBTIを使うと違法? 人気性格診断の落とし穴 — note(山本昌寛)






