「最近、なんかしんどいんですよね」と口にするのが、毎年8月に集中します。
人事同席の面談を年間200件近くやっていますが、「辞めようかと思っています」という言葉が夏前後に固まって出てくる。春に入社して、研修が終わって、はじめて一人で仕事を回して、そこまで乗り切ったのに急に動けなくなった、という感覚。本人も、周りも、「なぜ今になって?」と思っている。
なぜ今になってか、には理由があります。しかもその崩れ方は、MBTIのタイプによって全然違う。EJ型とIP型では、しんどさの種類が根本から異なるので、「休め」「頑張れ」の一言では解決しないんです。
4〜5ヶ月目に起きる「アドレナリン切れ」の正体
入社直後というのは、脳が勝手に動いてくれます。新しい環境への適応を、生存に直結するタスクとして脳が扱ってくれるので、緊張と集中が自然に続く。この状態は、本人の意志とは別のところで体を動かしてくれています。
問題は、この機能に寿命があること。
だいたい3〜5ヶ月で「慣れる」が完了します。そこから先は、素の自分のエネルギーで動かないといけない。4月には「疲れているけどなんとかなっている」と感じていたのに、8月になると同じ量の仕事がこなせなくなる。これは本人の弱さでも、さぼりでもない。自動補正が切れただけです。
厚生労働省が公表している「新規学卒就職者の離職状況」(令和4年3月卒業者)によると、大卒の就職後3年以内の離職率は33.8%にのぼります。現場の感覚でも1年目に集中していますが、「合わない」という理由の中に、「タイプと職場の充電リズムのズレ」が含まれているケースが、ぼくの見てきた範囲でかなりの割合を占める。合っていないのは職場ではなく、回復の仕方だった、ということが少なくない。
E×I軸とJ×P軸が出す、夏の崩れ方
夏に崩れる構造を理解するのに、2つの軸が使いやすい。「外向き(E)か内向き(I)か」という充電の向きと、「計画型(J)か柔軟型(P)か」という処理の順番。この組み合わせで、崩れ方が4タイプ出てきます。
EJ型:成果を急ぎすぎて空回り
夏になると「もうできるはずなのに」という焦りが出やすい。4月から計画通りに動いてきた。勉強した。提案も出した。でも半年経っても目に見える成果が出ない。その焦りが、上司へのアプローチ頻度や自分への要求水準を上げる方向に出てきます。
周りから見ると「最近空回りしてる」と映る。本人は「最初より頑張っている」と思っているから、評価されないことに余計消耗する。
悪気はゼロなんですよ、たぶん。タイムラインで動いているだけです。
EP型:失速を「さぼり」と誤解されるパターン
入社直後の熱量が高かった分、夏に失速が目立ちます。EP型は状況への反応力が高いので、4月の刺激だらけの環境ではよく動ける。でも「毎日が当たり前」になってくると、反応できる対象が減ってくる。動けていないわけじゃないのに、さぼっているように自分でも周りにも見えてしまう。
それに罪悪感を持ち始めて、「自分はこの仕事に向いていないのかも」に行くのが夏の典型です。これも構造的な話で、本人の性格の問題ではない。
IJ型:静かに限界を超えている、外から気づかれないパターン
これが一番危ない。
IJ型は感情を表に出さないので、ストレスが積み上がっていても表面上は「普通」に見えます。本人も「まだ耐えられる」と判断し続けるから、限界サインを自分で見逃しやすい。
ある企業の社員が、8月のある朝「もう辞めようと思っています」と突然言ってきた。上司も人事も、「全然そんな素振りがなかった」と驚いていました。でも本人に丁寧に聞いてみると、5月から体が動かなくなることが増えていた。「このタイミングで言うのは迷惑かも」「もう少し様子を見てから」という判断を繰り返した結果、夏で燃料が尽きた。周囲への気遣いが、結果として裏目に出たパターンです。
IJ型は「誰かに言えば動き出す」ことが多い。問題は、言葉が出てくるまでが長いことです。
IP型:社交疲労と選択疲労が同時に来るパターン
この型には、2種類の疲れが夏に重なります。1つは「毎日人と一緒にいることの消耗」。もう1つは「決めなきゃいけないことが溜まってしまった」という疲れ。
職場という環境は、IP型にとって常にエネルギーを使う場所です。4ヶ月そこにいるだけで、充電が追いついていない状態になっている。夏休みがあっても回復しきれないのは、一人になれる時間を確保できていないことが多いから。「なぜ休んでもしんどいのか」が本人にも説明できなくて、「自分がおかしいのかも」という方向に行きやすい。
しんどさの種類を間違えると、対処が刺さらない
「夏にしんどい社会人1年目は旅行に行くべき」という話があります。EP型にはこれが効くことがある。でもIJ型はひとりになれない旅行でむしろ消耗するし、「やり残したことがある感覚」が消えないから休めない。
「まず休め」も万能じゃない。EJ型に「まず休め」と言っても、成果が出ていない状態で休むことそのものがストレスになる。
「回復の向きが逆だと、休んでもしんどい」という話を面談で出すと、何人かが「これ自分のことだ」という顔をします。言葉にできていなかっただけで、感覚としてはわかっていた、ということが多い。充電の仕方が合っていないだけで、その人が弱いわけじゃない。「何がしんどいか」の種類を先に特定することが、対処の前に来ます。
秋から立て直すための一手をタイプ別に
対処を複数渡しても誰も実行しません。タイプ別に1つだけ。
EJ型が試すこと: 今週の「完了」を1つだけ決めてから動く。成果の大きさではなく、「終わらせた」という感覚を取り戻すことが先です。金曜の終わりに「今週完了したこと」を一行だけメモする。これだけで、成果へのこだわりが少し落ち着きます。
EP型が試すこと: 朝、5分だけ今日やることを1つ声に出す。行き当たりばったりの動き方が悪いわけじゃないけど、「今日動いた」という感覚をなんとか残さないと、自己否定が積み上がります。1つだけでいい。
IJ型が試すこと: 状態を言葉にして、誰かに伝える。「最近疲れています」の一言でいい。上司でも同期でもいい。IJ型は言葉にするまでが難しいけど、言葉にした時点で状況が動くことが多い。「言ったら心配させてしまう」という読みが強いタイプなので、「報告」ではなく「情報共有」のつもりで出す、というフレームを持っておくと出しやすくなります。
IP型が試すこと: 仕事が終わったあとの30分を、完全に一人の時間にする。スマホも見ない、誰とも話さない30分。IP型にとって「飲みに行くと元気になるか、一人でいると元気になるか」は大事な問いで、研修でこれをさっと確認するだけで充電の向きが可視化されます。一人派のIP型に、チームの打ち上げを「回復手段」として勧めないこと。これだけで、かなり変わる。
で、明日から何をするかって話なんですが、ここで渡したのはタイプ別の1つです。4つ全部やろうとしない。まず自分のタイプのところだけ、今週試してみてください。
FAQ
「社会人1年目の夏がしんどいのは、弱いからですか?」
弱さじゃなくて構造です。入社直後に体が自動で出していた「適応エネルギー」が4〜5ヶ月で切れるのは、タイプに関係なく起きる現象に近い。5月を乗り切ったのに8月に落ちたのは、5月が耐えられる人間で8月が耐えられない人間だということではない。素の自分で動かないといけないフェーズに入っただけです。
「自分のMBTIタイプが分からない場合、どうすればいいですか?」
まず1つだけ確認してください。「仕事の後、一人でいると元気が戻るか、誰かといると元気が戻るか」。一人派ならI型、人といる派ならE型。この軸だけで、充電の方向性と対処の選び方はかなり絞れます。正確なタイプ診断は公式のMBTI検査を受けるのが確実ですが、夏の立て直しを始めるならまずこの問いで十分です。
「IJ型の部下の限界に、上司はどうすれば気づけますか?」
「最近どう?」という問いには答えないことが多い。代わりに「今週、一番しんどかったことを1つだけ教えて」と聞いてみてください。具体的な問いのほうがIJ型は答えやすい。一般的な「調子は?」は処理できずにスルーされることがある。
「秋になっても回復しない場合はどうすればいいですか?」
タイプ論でカバーできるのは「処理の癖と職場リズムのズレの構造理解」までです。体の重さや気持ちの落ち込みが秋以降も続くようであれば、産業カウンセラーや会社の健康管理室、心療内科など専門家に相談することをすすめます。タイプ論は入口のツールであって、メンタルヘルスの不調そのものへの対処ではない。
「タイプ別の対処は、どのくらい効果がありますか?」
ここは正直に言うと、業種や職場環境によって刺さり方は変わります。ぼく自身が研修や面談の現場で実際に手応えがあったことをベースに書いていますが、全員に同じように効くとは限らない。あくまで「今週試してみる補助線」として使ってください。
参考文献
- 新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者) — 厚生労働省, 2025年公表
- 3年以内離職率が高校卒で2年連続上昇、大学卒は3年連続(国内トピックス: ビジネス・レーバー・トレンド 2024年12月号) — 労働政策研究・研修機構(JILPT), 2024年12月
- 「入社3カ月目」は要注意! 新入社員のメンタルヘルス対策を強化する4つのポイントを解説 — 日本人材ニュースONLINE






