「なんか、あの上司と話すとぐったりするんですよね」
研修の休憩時間に、よくこういう声を聞きます。うちの研修でも毎回ウケるんですが、「ぐったりするのはあなたのせいではない」という話をすると、会場の空気がちょっと変わるんですよ。
苦手な上司・同僚と一緒に働くのは、体力を使います。ただ、MBTIのタイプ差が見えてくると、「何がズレているのか」が少し明確になる。そして一手だけ動かせば通じることがある、という経験を繰り返してきた立場から、今日はその話をします。
「噛み合わない」の正体を一度冷静に見てみる
噛み合わない上司・同僚と接するとき、最初に考えがちなのが「相手がおかしい」か「自分の伝え方が悪い」のどちらかです。
どちらも正確じゃない、というのがぼくの立場です。人材会社での法人営業5年と、独立後の組織開発コンサル10年で感じてきたのは、職場のコミュニケーションのズレは「処理の手順が違う」から来ることがほとんどだということ。
MBTIで特に影響が大きいのは、2つの軸です。
J(計画型)とP(探索型)の違い
Jタイプは結論を先に固めてから動きます。報告を聞くとき、「結論が先に来ないと次の情報が入りにくい」構造になっている。Pタイプは情報を広げながら結論を見つけに行くスタイルで、途中の変更や発散をネガティブに感じません。J型の上司とP型の部下が組み合わさると、「まだ決まっていないのか」vs「まだ考えている途中なのに詰められる」という摩擦が起きやすくなります。
T(論理型)とF(感情型)の違い
Tタイプは根拠と手順で判断します。「感情を持ち込まずに考える」ことを自然とやっています。Fタイプは関係性と価値観で判断します。「根拠があっても、自分が納得できないと動けない」という感覚がある。T型の上司がF型の部下に「根拠は?」を繰り返すと、評価されていないという感覚を与えやすい。
相手がおかしいわけでも、自分がおかしいわけでもない。手順が違うだけです。ここを理解すると、イライラの重心が少し変わります。
「あの上司、苦手」はだいたい3つのパターンに分かれる
年間60社で研修を回していると、「苦手な上司」の話が毎回出てきます。不思議なことに、パターンが絞られている。
パターン①「根拠は?」上司(ESTJやISTJ系)
報告した瞬間に「それ、どういう根拠で?」が来るタイプです。資料を出しても「なぜこの順番?」と聞かれる。
悪気はゼロなんですよ、たぶん。ESTJやISTJに多い傾向ですが、論理的な順番で情報が入らないと承認判断ができない構造になっています。「信用していない」のではなく、「手順が揃わないと動けない」という思考の順番です。
一手は、報告の冒頭を変えることです。「結論から言うと〇〇で、根拠は3点あります」という型を先頭に置くだけでいい。実際に退職を口にしていた3年目の社員に試してもらったことがあります。「先に結論を伝えて、根拠を3点で区切る」それだけを変えてもらったところ、3週間後に「あの上司と話せるようになりました」と連絡が来ました。型を一つ渡しただけです。
パターン②「とりあえず動いてみよう」上司(ENFPやESFP系)
毎週方向が変わります。先週「これで行こう」と言っていたのに、今週は別の話になっている。ENFPやESFP系に多い傾向で、探索しながら結論を作るのがデフォルトの思考スタイルです。
J型の部下にとってはこれがきつい。「決まってから動きたい」のに、決まる前に動き出すように求められる。計画が途中で変わる、という状況を繰り返されると消耗します。
一手は、会話の最後に一度だけ確認を入れることです。「今日の方向性を確定事項として確認させてください。〇〇で合っていますか?」と締める。相手を変えようとするのではなく、自分が情報を固定する動きを入れる。会議後に短い議事メモを自分で作って送るのも有効です。
パターン③「抽象的でつかめない」上司(INFJやINTJ系)
「いい感じでよろしく」「考えておいて」が多い。指示の細部が省略されていて、何をすればいいかわからない。INFJやINTJ系に多い傾向で、自分の中では全体像が完成しているため、説明が端折られます。
聞いていいのかどうか迷う、というのも研修でよく聞く悩みです。
一手は、自分の解釈を1文で返すことです。「確認させてください。〇〇という理解で合っていますか?」と聞く。相手の中の省略された情報を言語化してあげると、修正が自然に入ってきます。「補足してもらう」よりも、「自分が解釈したことを確認してもらう」という形の方が会話が続きやすい。
タイプは「処理の補助線」として使う
一つだけ、外してほしくないことがあります。
「あの人は〇〇型だから、こういう限界がある」という方向で使い始めると、タイプが評価の根拠になります。これは完全に誤用です。
ぼくには苦い経験があって、研修で使ったタイプ別の傾向資料を人事担当者に渡したことがあります。「配属の参考に」という話でした。断りきれなかった。半年後、現場で「あいつはあのタイプだから任せられない」という言い方が定着していた。撤回と再研修に1年かかりました。タイプを評価に使った瞬間に、それは差別の道具になる。この感覚は、その経験から来ています。
タイプは「この相手は、どういう順番で情報を処理するか」を推測するための補助線です。「どう話せば通じやすいか」の仮説を立てるためだけに使う。一手試して、相手の反応を見る。うまくいけば続ける、通じなければ別の手を考える。タイプの答え合わせは必要なくて、通じたかどうかだけを基準にすれば十分です。
苦手意識が薄れた後に起きること
「一手変えてみたら、少しだけ話が通じた」
この体験が積み重なると、苦手意識の重心が変わっていきます。「この人とは無理だ」が「この人にはこう話せばいい」になる。完全に解決しないこともある。合わないと判断して距離を置くこともある。
ただ、「合わない」という結論に飛ぶ前に、一手だけ変えてみることを先にやってほしい。ほとんどの場合、手順の違いがわかればそれだけで少し楽になります。
で、明日から何をするかって話なんですが、今一番「噛み合わない」と感じている相手を一人思い浮かべてください。その人の話し方と、自分の話し方、どちらが「結論が先か後か」でズレているかを確認するだけでいい。それが最初の一手の手がかりになります。
FAQ
相手のMBTIがわからない場合でも使えますか?
十分使えます。相手のタイプが確定していなくても、「この人は結論から話す傾向があるか、情報を広げてから結論に来るか」を観察するだけで対処の一手が変わります。タイプ名よりも、「処理の順番の違い」を見ることの方が実用的です。
J/Pの違いが一番すれ違いに出やすいと聞きますが、正確ですか?
そう感じる方が多いのは確かで、研修でも頻度が高いテーマです。ただ個人差があります。T/Fの軸も、特に評価やフィードバックの場面で大きく影響します。どちらの軸のズレかを確認してから対処を選ぶことをお勧めします。正直、ここは研究者のあいだでも解釈が割れている部分があります。
上司のタイプを勝手に判断するのは失礼ではないですか?
「判断して決めつける」のは問題ですが、「仮説として考えてみる」は問題ありません。「この人は結論が先に来る傾向があるかもしれない」という仮説を立てて、一手試してみる。合わなければ別の仮説を立てる。この姿勢なら相手を尊重したまま動けます。
苦手な同僚がどのタイプかによって、対処が全然違いますか?
変わります。ただ、「相手が何に価値を置いているか(論理か関係性か)」と「どの順番で動くか(先に決めるか、探索しながら決めるか)」の2点を押さえれば、タイプ名を知らなくても対処の方向性は出せます。細かいタイプの区分よりも、この2軸の確認から始める方が早い。
この方法は、苦手な部下にも使えますか?(管理職・上司視点)
使えます。部下がPタイプなら、「今どこにいるかを確認するチェックポイントを増やす」という工夫が有効です。「なぜ報告が来ないのか」と感じるなら、こちらから「今どこまで進んでいる?」と聞く頻度を増やすだけで摩擦が減ります。指示の出し方を変えることで、互いの手順のズレを埋められます。
参考文献
- The Myers & Briggs Foundation — MBTI Preferences — Myers & Briggs Foundation(参照: 2026年8月)
- A 25-Year Review and Psychometric Synthesis of the Myers-Briggs Type Indicator (MBTI) – Form M — Journal of Counseling & Development, Wiley(2025年公開)
- The Cognitive Functions of Every Myers-Briggs Personality Type — Psychology Junkie(参照: 2026年8月)
- Better Team Talk: Use MBTI to Boost Team Communication — TeamDynamics(参照: 2026年8月)






