「9月になってから、なんか調子でないんですよね」という相談が毎年増えます。
ぼくは年間60社で研修を回っているんですが、名古屋から各地へ移動する新幹線のなかで、前の週の相談メモを読み返すことが多い。9月下旬から10月にかけて、「なんとなく体が重い」「やる気が出ない」「焦っているのに動けない」という内容が集中してくる。この時期になると、いつも同じパターンが来ます。
秋バテという言葉がある。夏の疲れが遅れて出てくる現象で、自律神経の乱れや日照時間の短縮でセロトニンが減ることが原因とされている。これ自体はわりと知られている話なんですが、研修現場で気づいたのは、崩れ方がタイプによって全然違うということです。
同じオフィス、同じチームで同じ夏を乗り越えた人たちなのに、9月末には「空回りしている人」と「静かに止まっている人」が混在する。一律の対処が効かないのは、崩れ方の種類が違うから。E/I軸(エネルギーの向き)とJ/P軸(処理の順番)の2軸で見ると、4つのパターンで出てきます。
秋バテは「出方」がタイプで違う
秋に気力が落ちやすい背景のひとつは、日照時間の短縮によるセロトニン不足です。セロトニンは気分の安定に関わる脳内物質で、日光を浴びることで分泌が促される。9月末から日没が早くなると、分泌量がジワジワと落ちていきます(アリナミン製薬)。
加えて、夏の猛暑で消耗した自律神経が気温差でさらに乱れる「秋バテ」も、この時期の気力低下に関係しています(スマートドック)。代表的な症状は、だるい、すぐ疲れる、意欲の低下など。
ただ、同じ体の変化でも、どんな形で出てくるかがタイプによって違う。MBTIの2軸「E/I(外向き・内向き)」と「J/P(先に決めるか・流れで決めるか)」を組み合わせると、秋の崩れ方が4パターンに分かれます。
タイプで人を決めつけるためじゃなく、「今自分はどの崩れ方をしているか」を特定するための補助線として使ってください。
4パターンの崩れ方と、それぞれの一手
EJ型(ESTJ・ENTJ・ESFJ・ENFJなど):成果への焦りが秋に噴き出す
EJ型の充電源は「動くこと・人と関わること」で、J軸が「計画した分だけ進んだか」を常に確認している。夏のあいだは活動量も多く、充電できている実感がある。
問題は秋です。夏に積み上げてきたものを「これで十分か」と問い直し始め、「もっとやらないといけない」という焦りが出てくる。外から見ると「いつもどおり動いている」ように見えるのに、本人の中ではずっと焦燥感が鳴っている。動きながら消耗していく。
一手は「今週の確認を1つだけ設定する」こと。週の初めに「これだけ確認できたら十分」という基準を1つだけ先に決める。焦りをJ軸の「確認作業」に変換し、全部一度に片付けようとする衝動に蓋をする方法です。7つ確認しようとするのではなく、1つだけ確認する。これだけで焦りの暴走がだいぶ落ち着きます。
EP型(ESTP・ENTP・ESFP・ENFPなど):夏に走りすぎた分、秋にエンストが来る
EP型の充電源も「動くこと・新しい刺激」ですが、P軸が「流れに乗りながらその場で判断する」。夏はイベントも多く、得意なフィールドで全力で走れる時期です。
うちの研修でこの話をすると毎回ウケるんですが、EP型の秋バテは「怠けている」のではなく「夏に全力で動いた後のエンスト」なんです。急ブレーキがかかった後に、「なんでこんなにやる気が出ないんだろう」と自分を責め始めるのが一番まずい。
一手は「今月、1日だけ予定ゼロの日を先にカレンダーに入れる」。P型は内側から締め切りや構造を作るのが難しい。外から「その日は何もしない権利がある」と先に決める構造を与えることで、回復の時間が自然に確保されます。
IJ型(ISTJ・INTJ・ISFJ・INFJなど):外から見えないまま、静かに限界が来る
IJ型の充電源は「一人の時間・静かな環境」で、J軸が「手順どおり物事が完結すること」。夏の社交やイレギュラーな対応を、表情を変えずにこなしてきている。
問題は、限界のシグナルが外に出ないこと。返事もするし、笑いもする。でも内側の処理キャパは9月末には残り少なくなっている。悪気はゼロなんですよ、たぶん。本人も気づいていないまま、ある朝突然「動けない」が来る。周りからすると「急に?」ですが、IJ型からすると「ずっとその状態だった」んです。
一手は「週1回、5分だけ現状を言語化する」。信頼できる人に「最近こういう状態です」と現状を短く話す時間を週に1度作る。IJ型の限界は外に出ないから、情報共有という形で言語化させることが最も有効です。「助けてください」じゃなく「今こういう状況です」というフレームで伝えると、IJ型本人も話しやすくなります。
IP型(ISTP・INTP・ISFP・INFPなど):社交疲労と選択疲労の二重ダメージ
IP型の充電源は「一人の時間・自分のペースで動けること」で、P軸が「自分が選んだ流れで動くこと」。夏は帰省・飲み会・BBQなど外向きのイベントが重なりやすく、充電と放電が逆転しやすい。
秋になると、充電が戻り切っていないところに「今年の目標どうする?」「秋のイベントどうする?」という選択の波が来る。回復前に次の選択が来るから、判断する気力そのものが枯れます。
一手は「退勤後の最初の30分を、SNSもLINEも見ない時間にする」。選択が必要なものに触れない。IP型の二重ダメージは「回復する前に次の選択が来る」ことで悪化するので、まず回復の時間を物理的に確保するのが先です。飲みに行くとか遠出するとかじゃなくていい。30分だけ、何も選ばない。
チームで使える「充電の方向を一つ聞く」ワーク
研修の最後に「仕事後、何をすると一番楽になりますか?」という質問をチームに一巡させています。発言の強制はしない。ただ聞くだけ。
でも同じチームに「飲みに行くと元気になる」「一人で料理すると落ち着く」「走ると回復する」「何もしないのが一番楽」という全パターンが出てくる。これを知るだけで、「なんであいつは飲み会に来ないんだ」という誤解がかなり消えます。充電の向きが逆なだけで、悪意はない。
で、明日から何をするかって話なんですが、秋バテの時期にこのワークを一巡させると、崩れ方の種類が違うから「同じ発散法を全員に当てると効かない人が出る」という構造が自然に見えてくる。知っているチームと知らないチームでは、10月の消耗の仕方がちがいます。
FAQ
秋バテとMBTIに直接の因果関係はあるの?
秋バテ自体は体質・生活習慣・環境に依存するもので、MBTIと直接の因果関係があるわけではありません。この記事は「秋に疲れが出るとき、どんな形でしんどさが出やすいか」の傾向をE/I軸・J/P軸の2軸から見たものです。医療的な診断とは別の話として読んでください。
自分がどのパターンか、よくわからない場合は?
「今自分がどう崩れているか」を一言で表してみると見えやすいです。「焦って空回りしている」ならEJ型に近く、「急に動けなくなった」ならEP・IJ型に近い。「選択するのがしんどい」ならIP型的な崩れ方です。タイプを確定させるより、崩れ方の種類を先に特定する方が一手を選びやすくなります。
J型とP型の違いがよくわからない
一番わかりやすいのは「旅行でホテルを先に取りたいか、現地で探せるか」の違いです。先に取りたいのがJ型寄り、現地で決めても平気なのがP型寄り。処理の順番の違いで、どちらが優れているという話ではありません。秋の対処もJ型は「先に基準を決める」が効き、P型は「先に自由な時間を確保する」が効きます。
IJ型の限界を職場で早めに伝える方法は?
「助けてください」は言いにくいので、「情報共有」の形に変えるのがポイントです。「最近、少し処理が重くなっています」「今週はこれ以上の案件は難しい状況です」のように、感情ではなく状況として伝える。これだけで、周囲が動きやすくなります。
EP型が秋に自分を責めないためにできることは?
「急ブレーキがかかること自体は、夏にちゃんと動けた証拠」と解釈する。EP型のエンストは怠慢ではなく、全力で動いた後の体の正直な反応です。責めるより「今がその時期」と判断して予定を減らす選択を先に取る方が、回復は早くなります。
参考文献
- 秋に生じる体の不調「秋バテ」とは — アリナミン製薬株式会社
- 秋から冬に注意!日照時間の変化が季節性うつに影響する理由 — スマートドック
- 季節の変わり目に気を付けよう!「季節性うつ」とは — 株式会社ニチロ, 2024年10月
- 日照時間とセロトニン — 立命館大学 健康情報コラム





