公演から帰宅した夜、スマホにDMの通知が来ていました。「推しがINFPって公表したんですよね。わたし診断したらINTJで……なりたいって思っちゃいました。これっておかしいですか?」
おかしくないです。11年現場を回ってきた中で、同じ気持ちを打ち明けてくれた人が何人もいました。推しがタイプを公表するたびに、こういうDMが増えます。
「推しと同じタイプになりたい」という感覚、よくよく聞いていくと中身が3パターンに分かれているんですよね。パターンによって正体も付き合い方も全然違う。タイプは変えられるものでも変えるべきものでもないんですが、「なりたい」という気持ちを読み解いていくと、自分が推しの何に惹かれているかがくっきり見えてきます。推し方が変わるやつです、これ。
「なりたい」気持ちは3パターンある
同じ「推しと同じMBTIになりたい」という言葉でも、中身は全然違います。大きくこの3つに分かれます。
- 共鳴したくて「なりたい」(自己投影型)
- 劣等機能に引かれて「なりたい」(憧れ型)
- 今のタイプが嫌で「なりたい」(コンプレックス型)
複数が混ざっていることもあります。でも「どれが一番強いか」を知っておくと、自分の推し活の輪郭がはっきりしてくるんです。
パターン1 共鳴したくて「なりたい」
推しがINFPだと公表したとき、ファンの中に「自分もINFPだったら完璧なのに」という気持ちが出てくることがあります。推しと同じタイプだったら、「もっとわかり合える」「もっと近づける」という感覚。これが自己投影型の「なりたい」です。
悪い感情じゃないです。共感したい、つながりたい、という気持ちの自然な延長線上にある。推しの発言を「わかる」と感じたとき、その「わかる」をタイプで確認したいんですよね。
ただ、ここで一つだけ。同じタイプだからといって、同じ体験をしているとは限らないです。INFPでも、育ち方・環境・今いる場所が違えば、ぜんぜん違う人間です。
実は、タイプが違うほうが「届く」場面があります。推しがFi機能(内向感情)優位のINFPなら、そのFiは自分の判断軸をとても大切にしている機能です。「あなたと同じINFPです」という共鳴より、「この場面のあなたの選択が好きでした」という具体的な一行のほうが、Fiには刺さることが多い。同じタイプかどうかより、何を伝えるかのほうが圧倒的に大事なんです。
ファンからのDMで一番多いのも、このパターンです。推しのタイプが公表された直後って、コミュニティ全体がざわっとするんですよね。「自分も診断し直した」「なりたい」「一致してた!」って一気に流れる。その熱量の中に、共鳴への欲求がすごくよく出ています。
パターン2 劣等機能に引かれて「なりたい」
少し面白い話をします。「推しと真逆のタイプなのに、なぜか目が離せない」という感覚と、「推しと同じタイプになりたい」という感覚、実は同じ心理が根にあることがあります。
認知機能の理論でいう「劣等機能(第4機能)」への憧れです。誰でも、自分の一番使いにくい機能があります。それが「自分には難しいのに、推しが当たり前のようにやっている」ように見えるとき、「あの人みたいになりたい」という気持ちが出てくる。
たとえばINTJの場合、劣等機能はSe(外向感覚)です。今ここにある感覚を全開で楽しむ機能。ESFPやESTPの推しを見て、「あの人みたいに軽やかに今を生きたい」と感じる。これは劣等機能への憧れが形になったものです。
このパターンが面白いのは、「推しと真逆タイプで目が離せない」も「推しと同じタイプになりたい」も、同じ引力から来ている場合があること。真逆タイプの推しに惹かれているとき、実はその推しが自分の劣等機能を体現しているんですよね。「あの人みたいになれたら」が「同じタイプになりたい」に変わる、そういう道筋があります。
言いたいのは、その軽やかさ、INTJにはINTJの形があるということです。SeではなくNi(内向直感)とTe(外向思考)から生まれる、計画通りにことが動くときの静かな手応え。それはSeの軽やかさとは別物だけど、INTJにしか出せない動き方なんです。
劣等機能に憧れるのは自然だし、その憧れを入り口に自分のタイプを深掘りするのはすごくいい使い方です。ただそれを「なりたい」に変える必要はないです。
パターン3 今のタイプが嫌で「なりたい」
これがいちばん多くて、いちばん見落とされているパターンです。
「INFPになりたい」という言葉の裏に、「INTJが嫌」という気持ちが隠れていることがある。INTJは「冷たい」「共感がない」「人付き合いが下手」……そういうイメージを持たれていることへの疲れ。あるいは、周りからそう言われてきた積み重ねです。
それがあるとき、推しのINFPという柔らかさや感受性の深さを見て、「ああいう人間になりたい」になる。
これはタイプへの不満というより、自分への不満なんですよね。
正直に言います。現場で11年見てきて思うのは、INTJがINFPになることはないし、なる必要もない。INTJが持っているNiとTeの組み合わせは、INFPには出せない動き方をします。ライブのセットリストの意図を言語化する速度、推しの成長を長期で追う視点、イベントの準備を緻密に組み立てる能力。これぜんぶ、INTJの動き方から来ています。
「コンプレックス型」の「なりたい」は、タイプへの不満ではなく、自分のタイプをまだちゃんと読めていないサインかもしれないです。
もう一つ気をつけたいことがあって。推しがINFPだと公表した後、ファンコミュニティで「INFPだから批判的なコメントは控えよう」「しんどいはず」という空気が広まることがあります。一見優しく見えるんですが、これは推しのFi機能(自分の判断軸を持つこと)をファンが肩代わりしようとしている状態で、実はFiを尊重していないことになる。「なりたい」という気持ちが、「推しの代わりに守る」に変わってしまうパターンです。タイプを知ることで変えるのは、相手への理解の解像度であって、相手の行動の予測ではないです。
「なりたい」気持ちとどう付き合うか
3パターンを読んできて、どれかに近いものはありましたか?
どのパターンにも共通して言えることが一つあります。「なりたい」という気持ちは、自分が推しの何を好きなのかを教えてくれる感情です。消す必要はないし、「ならなければ」と焦る必要もない。
自己投影型なら: 推しと同じタイプかどうかより、推しの発言や選択の何が「わかる」と感じたのかを言語化してみる。そっちが手紙に書くべき中身です。
憧れ型なら: 推しの持っている機能への憧れを、自分の劣等機能への気づきとして受け取る。その機能を少しずつ使ってみるのも、一種の推し活です。
コンプレックス型なら: 自分のタイプの「説明書」を一度だけちゃんと読んでみてほしいです。コンプレックスに見えている部分が、実は一番強みになっているケースが多い。INTJを嫌だと思っている人に、INTJにしか出せない推し活の鋭さが出ていることを、わたしは現場で何度も見てきました。
これ、現場で見たときに思ったんですけど、推しと違うタイプでも推し活が深い人はいます。むしろ自分のタイプでの届け方を知っている人のほうが、長く追い続けられることが多い。同じタイプになろうとするより、今の自分のタイプで届く方法を知っているほうが、ずっと強い推し活になります。
公表はしてないので、あくまで考察ですが、わたしが現場で「この人の応援、すごいな」と思ってきた人たちは、自分のタイプを肯定的に使っていた人が多かったです。INTJなら分析の深さで、INFJなら観察の鋭さで、ESFPなら現場の熱量を作ることで。タイプを変えようとするより、そっちに時間を使ったほうがいい。
※ 本記事でのタイプ解説はMBTI®認知機能理論に基づく傾向の話です。個人の特性はタイプだけで決まるものではなく、公表情報があってもコンテクストによって解釈は変わります。
FAQ
推しと同じMBTIになりたい気持ちは変ですか?
全然変ではないです。推しへの共感や憧れが「タイプを通して近づきたい」という形で出てきているもので、ファン心理として自然な感覚です。この気持ちが3パターンに分かれることと、それぞれの付き合い方を知っておくと、自分の推し活の見え方が変わってきます。
MBTIタイプは変えられますか?
正式なMBTI®アセスメントでのタイプは「変える」ものではなく、成長や環境によって診断結果が変わることはあります。16personalitiesなど自己報告式の診断では、そのときの状態によって結果が変わることもあります。「このタイプになりたいから変える」という操作的なものではないです。
推しと真逆のタイプでも推し活できますか?
もちろんです。タイプが違うからこそ、相手が見えていない角度から応援できる場面もあります。自分のタイプに合った届け方を知っているほうが、長期的な推し活には有利なことが多いです。
推しのMBTIが公表されたとき、推し方を変えることはおかしいですか?
おかしくないです。推しのタイプが伝え方の選択肢を増やすために使えるなら、正しい使い方だと思います。ただ「タイプでわかった気になって断定する」のは別の話なので、公表情報を一次情報として扱いつつ、考察はあくまで考察として持つバランスが大事です。
「なりたいMBTI」に推しのタイプを選ぶのはよくないですか?
よくない、というより「もったいない」と感じます。推しのタイプへの憧れを入り口に、自分のタイプの認知機能を深掘りするほうが、最終的には自己理解が深まります。推しのタイプになろうとするより、今の自分のタイプで推しに届く方法を探すほうが、推し活として面白い道です。
参考文献
- MBTI Basics — The Myers-Briggs Company 公式
- What Is the Inferior Function in the MBTI? — Verywell Mind, 2023年
- Inferior Function: The Shadow Side of Your Type — Practical Typology
- Cognitive Functions Overview — Type In Mind






