アニメ「進撃の巨人」の全94話が2023年11月に完結した。完結した作品のキャラクターを書く、というのがぼくの基本的な姿勢だ。放送中に書かない理由がある。
以前、別の作品で放送2話の時点でキャラのタイプを断定して記事を出したことがある。最終話で過去編が入り、行動の理由が序盤とほぼ真逆だったことが判明した。訂正記事を書く羽目になった。それ以来、進行中の作品は「留保つき」で書くか、完結を待つかのどちらかにしている。
進撃の巨人、特にエレン・ミカサ・アルミンの三人は、完結してから読まないと判断できない部分が多い。ぼくのNotionの視聴メモで、進撃は最も話数単位の項目が多い作品のひとつになっている。
タイプの断定よりも「どの場面を根拠にするとそう読めるか」の手順を優先して書く。反証も自分で出す。
エレン・イェーガーのMBTI:「自由への渇望」を機能スタックで読む
エレンほどタイプ判断が難しいキャラクターは、この作品に限っても珍しい。第1話の「外に出たい」という少年と、第76話以降の地鳴らしを実行するエレンを、同じスタックで読もうとすると必ずどこかが崩れる。
ネット上で多く見るのはESTP(Se-Ti-Fe-Ni)という読みだ。即座の判断、身体的な優位性、感情よりも現状への対処を優先する動き方。序盤のエレンには確かにそれが見える。ただ、ESTPを前提として読んだとき、Season 4後半の行動が説明しにくくなる。
ESTPの中核にあるSeは「今この瞬間の感覚情報への対応」に強い機能だ。複数年にまたがる計画を起点に動くNiとは、時間軸の向きが根本的に違う。第76話以降のエレンが実行してきたことは、どう見ても今この瞬間への反応ではない。
Ni(内向直感)を主機能に持つ読みに変えると、後半の行動は一貫する。長期的な構造を先に把握し、そこに向かって動く。INFJかINTJかという論点は残るが、Ni主機能という前提ならSeason 4の判断の精度が説明できる。
ただし、この作品には判断を難しくする要素がある。攻撃の巨人の「後継者の記憶が見える」という能力だ。エレンは幼少期から未来の自分の記憶を受け取っていた可能性が高い。そうなると、序盤の「衝動的に見えた行動」の一部は、本人も気づかない形で未来に向けて動いていたことになる。機能スタックの問題なのか、作品の構造の問題なのかが切り分けにくい。
断定はできないが、傾向としては、Ni主機能を持つという前提が最も崩れにくい。補助機能がFe(INFJ)かTe(INTJ)かは、どちらを支持する場面も本編に存在する。エレンについては「Ni主機能を持つINFJまたはINTJ」という留保つきの結論にしておく。
ミカサ・アッカーマンのMBTI:行動の根拠を追う
「無口で最強」のキャラクターはISTP(Ti-Se-Ni-Fe)と読まれやすい。ミカサも例外ではなく、ISTPという読みは広く出回っている。ぼく自身、最初にそう読んでいた。全話を見た後では、違う読みが出てきた。
ISTPの行動原理の中心はTi(内向思考)だ。内的な論理システムで現状を分析し、最も効率的な手順を選ぶ。感情は後から来るか、来ないか、という構造になる。チルチャック(ダンジョン飯)やキルア(HxH)がそうだ。冷静で、状況を切り離して処理できる。
ミカサの行動の根拠は、そこではない。
第5話、ミカサが「この世界は残酷だ」と独白する場面なんだが、彼女が戦う力を持てたのはエレンに「戦え」と言われた瞬間だった。論理的な判断で「戦う必要がある」と判断したのではなく、特定の一点への個人的な絆が、行動の根拠になっている。これはFi(内向感情)の動き方に近い。外から与えられた合理的理由ではなく、深い個人的な価値が起点になる。
第94話の最終決断は、この読みを最も強く支持する。(重大な展開に触れる。)エレンを止めるために彼の首を切った後、ミカサはエレンの首を抱いて泣く。理論的な判断で「最善の選択をした」という論理的整合で行動が完結しているなら、ここに至るまでの内的な葛藤の深さは説明しにくい。Fi主機能が、深く個人的な価値と向き合っている状態だと読める。
ISTPと読める場面もある。第2期での複数の巨人への対処、戦況の即座の読み取り。これはSe-Tiの「状況への素早い対応」という構造だ。ただ、ISFPもSeを補助に持つため、この場面だけで判別するのは難しい。
傾向としては、ISFP(Fi-Se-Ni-Te)仮説が最も崩れにくい。行動の動力源を追ったとき、Fiが中心にある。
アルミン・アルレルトのMBTI:共感的戦略家の機能スタック
アルミンは「頭のいいキャラ」という印象から、INTPやINTJと読まれることがある。ぼくはINFJ(Ni-Fe-Ti-Se)を支持する読みを持っている。
根拠は、行動の起点にある。
第1話から、アルミンが語っていたのは「壁の外には海がある」「世界はもっと広い」というビジョンだ。短期的な合理性ではなく、まだ見ていない未来の像が、行動の起点になっている。Ni(内向直感)の動き方だ。INTPやINTJとの違いは、そのビジョンの中に「人間の関係性」が含まれているかどうかだと思う。アルミンのビジョンには、常に「この仲間と一緒に見たい」というFeの軸がある。
アルミンの作戦が他のキャラの計画と違う点は、「敵の人間的な動機を読んで予測する」部分だ。第1期のアニ戦での囮作戦も、第3期後半のライナーへの接触も、「相手がどう感じて行動するか」を先に把握したうえで設計されている。Fe(外向感情)が補助機能として機能している動き方だ。
ENFJではないかという反論は、成立する。ENFJもFe主機能・Ni補助の構造を持ち、他者への共感と長期的なビジョンを持つ。ただ、アルミンの行動の起点は「場の感情を調整すること(Fe主機能的)」より「自分が見た未来の像を実現すること(Ni主機能的)」の順序に見える。第1話から持っていた「海を見たい」というビジョンが、行動の根幹にある。
第94話(完結編後編)のジークとの対話場面。生命の価値と出会いの意味について語ったアルミンの言葉は、Fe的な人間関係への価値付けだ。INFJが持つNi-Feの動き方と整合する。
INFJという読みが最も崩れにくい、というのが今の結論だ。別の読み方もできる場面があることは認める。
三者の機能スタック対比と関係性の設計
エレン(Ni主機能、留保つき)、ミカサ(Fi主機能のISFP)、アルミン(Ni-FeのINFJ)。この三者の機能スタックの組み合わせは、物語の最終局面の摩擦を作っている。
ミカサはFiが主機能のため、「エレンのどこかにある善性への個人的な信頼」を最後まで手放せない。第94話の判断の難しさは、エレンを止めることとエレンへの個人的な絆の両方を、Fi主機能で同時に抱えなければならない状態から来ている。
アルミンはNi-Feで、エレンが何をしようとしているかを他の誰より早く理解していた。ただ、彼の判断は「エレンを見捨てない(個人感情)」より「この結末が人類にとって最善か(大きな枠の判断)」で動いている。同じ最終局面でミカサとアルミンが違う動き方をするのは、Fiが中心かFeが中心かの差だと読める。
エレンの孤立した最終決断は、Ni主機能が「周囲を遠ざけながら一点の目標だけを見る」というパターンと整合する。ただ、これはINTJでもINFJでも起きうる。どちらかに絞る根拠を、ぼくはまだ本編の中に見つけられていない。
リヴァイ兵長のMBTI考察については別の記事で読める。「無口で最強」パターンとして外見が似ているミカサとリヴァイが、機能スタックの構造でどう違うかを比較すると、この二人の考察の補足になる。
FAQ
エレン・イェーガーのMBTIはINFJとINTJどちらが正しいですか?
本編の場面を根拠にする限り、どちらか一方に断定するのは難しい。Ni主機能である可能性は高いが、補助機能がFe(INFJ)かTe(INTJ)かは、どちらを支持する場面も本編に存在する。「Ni主機能を持つINFJまたはINTJ」という留保つきの結論が誠実なところだ。序盤のエレンだけを根拠にするとESTPという読みも出てくるが、Season 4後半の行動を説明しにくくなる。
ミカサ・アッカーマンがISTPではなくISFPと読まれる理由は何ですか?
行動の動力源が「論理的な効率判断(Ti)」ではなく「特定の人物への深い個人的な絆(Fi)」から来ているからだ。第5話のエレンの言葉で戦う力が出た場面、第94話の最終判断後の行動に、Fi主機能の動き方が一貫して出ている。「無口で強い」という外見はISTPに見えるが、何を根拠に動くかを追うとISFPに近い。
アルミン・アルレルトはINFJとENFJどちらですか?
INFJの読みを支持している。ENFJはFe主機能で「場の感情を調整する」のが主な動力源だが、アルミンは「自分が見たビジョン(Ni)を実現するためにFeを使う」という順序に見える。第1話から一貫して持っていた「壁の外の海を見たい」というビジョンが、行動の根幹にある。これがNiを主機能と読む根拠だ。
進撃の巨人のアニメは何話で完結しましたか?
2023年11月に完結編後編が放送され、全94話でアニメが完結した。この記事での考察はアニメ全94話を根拠にしている。原作漫画(諫山創、別冊少年マガジン連載)は2021年4月に完結しており、アニメと一部描写が異なる場面がある。
進撃の巨人の他のキャラクターのMBTI考察はありますか?
リヴァイ兵長の考察については別の記事で読める。今後、エルヴィン・ハンジ・ライナーなど他のキャラクターについても、本編の場面を根拠に書いていく予定だ。複数のキャラクターを並べて機能スタックを対比すると、進撃の巨人という作品の構造がより見えやすくなる。
参考文献
- TVアニメ「進撃の巨人」公式サイト — 講談社・MBS・NHK(アニメ全94話の放送情報、2023年11月完結)
- 諫山創「進撃の巨人」(別冊少年マガジン連載、2009年〜2021年4月)— 講談社(全34巻)
- MBTI Basics — Myers & Briggs Foundation(認知機能スタックの基本概念)
- Carl G. Jung「Psychological Types」(1921)— ユング心理学における内向直感・外向感情の機能定義






