相談室で、こんな問いを受けることがあります。「10年前にINFJと出たのに、最近やり直したらINFPになった。どちらが本当のわたしなのか」。あるいは「社会人になってから、タイプが変わった気がする」という話です。

その方と話を続けると、10年の間に仕事環境が大きく変わり、チームのまとめ役を長く続けていたと聞きました。Fe(外向的感情)を日常的に大きく使う職場での自分を基準に答えていたとしたら、結果が変わっても不思議ではありません。

タイプそのものが変わることは、ほぼないとされています。でも「前と違う結果が出た」という体験は、空振りではありません。そこには、年齢を重ねる中で人の内側に起きている変化が、静かに映っています。

認知機能には「使われる優先順位」がある

MBTIの各タイプには、4つの認知機能が割り当てられています。

たとえばINFJなら、Ni(内向的直観)、Fe(外向的感情)、Ti(内向的思考)、Se(外向的感覚)の順です。INFPなら、Fi(内向的感情)、Ne(外向的直観)、Si(内向的記憶)、Te(外向的思考)という並びになります。

一番よく使うのが第1機能(主機能)。それを支えるのが第2機能(補助機能)。第3機能と第4機能(劣等機能とも呼ばれます)は、普段はあまり前面に出てきません。使えないわけではありませんが、「利き手でない側の手」のような感じで、意識しないと動員しにくい。それが基本的な構造です。

この4つの機能が、年齢や経験とともに少しずつ発達していくという考え方があります。ユング心理学に基づいた見方です。順番に育っていく、という点が重要で、第3・第4機能は人生の後半に向けて動き始めるとされています。

人生の転機で、眠っていた機能が動き始める

ユング心理学では、人生の前半と後半を区別して考えます。前半は主機能と補助機能を使って社会に適応していく時期。後半は、それまで使ってこなかった機能に向き合い始める時期です。

Myers-Briggs Company(MBTI公式)の資料では、第3機能の発達は30〜40代に、第4機能(劣等機能)の統合は中年期以降に始まりやすいと説明されています。ただし、これはあくまで傾向の話ですが、個人差はかなりあります。

転機の形は人によって違います。職場の役割が大きく変わる。結婚、出産、親の介護。長期的な挫折や、大切な人を失う経験。これらは、これまで使ってきた主機能と補助機能だけでは乗り越えきれない状況を生み出します。そのとき、ふだんあまり動員してこなかった機能が前に出てきます。

「最近、細かいことが気になるようになった」「前より感情的になってきた気がする」「逆に、感情より論理で動くようになった」。こういった変化の感覚は、その機能が育ち始めているサインのひとつかもしれません。

「昔と違う結果が出た」は何を意味するか

重要なのは、第3・第4機能が発達してもタイプそのものは変わらないという点です。

では、なぜ「違う結果が出た」のか。原因のひとつは、検査への答え方にあります。検査の質問は「自分がどう行動しやすいか」を尋ねるものが多く、「今どんな環境に置かれているか」に引っ張られやすい設計になっています。特に、長期間にわたって普段とは違う役割を担っていた場合、その自分を基準に答えてしまうことがあります。

以前、INFJの方から「NiよりNeが当たっている気がする」という話を受けたことがあります。少し話を聞くと、当時の職場が毎回異なる提案を求めてくる環境で、そこでの自分を基準に答えていたとわかりました。「では、家での自分を基準に答えてみてください」とお伝えして半年後、「INFJにちゃんと当てはまりました」と教えてくださいました。

そう感じたのは、たぶん間違っていません。「どんな自分で答えたか」という文脈が、結果に大きく影響します。

第3・第4機能が育ってきた結果として「別のタイプが出た」と感じる場合も、構造は同じです。もともとのタイプが間違いだったのではなく、これまで使ってこなかった領域が動き始め、それが答えに反映されている。そういう読み方が近いと思います。

タイプごとの変化の感じ方(3つの例)

具体的に見てみます。どんな変化として感じられやすいかは、タイプによって異なります。

INFJの場合(主:Ni、補:Fe、第3:Ti、第4:Se)

「なぜそうなるのか、もっと論理的に説明できるようになりたい」という欲求が出てくるのは、Ti(内向的思考)が育ち始めているサインかもしれません。また、「以前より今この瞬間を楽しめるようになった」「身体を動かすことが心地よくなってきた」という変化は、Se(外向的感覚)の動きとして読めることがあります。

INFPの場合(主:Fi、補:Ne、第3:Si、第4:Te)

「スケジュールをちゃんと管理したくなってきた」「段取りを考えないと落ち着かなくなった」という変化は、Te(外向的思考)が発達してきているサインです。「昔は計画なんて立てなくていいと思っていたのに」という言葉は、INFPの方からよく聞きます。

ISTJの場合(主:Si、補:Te、第3:Fi、第4:Ne)

「合理的に判断しているはずなのに、なんとなく気持ちとずれる感じがある」という経験は、Fi(内向的感情)が動き始めているケースがあります。「ふと、これまでやってこなかったことに興味がわいてきた」というのは、Ne(外向的直観)の動きです。ISTJの方にとっては、この変化が「自分らしくない」と感じられて戸惑いとして現れることも少なくありません。

どのタイプにも共通しているのは、「自分らしくない」と思っていた部分が、少しずつ使えるようになってくるという感覚です。

「変わった気がする」に向き合うための視点

第3・第4機能が動き始めることは、ユング心理学では「個性化(Individuation)」と呼ばれる自己統合のプロセスの一部とされています。自分の全体性に向かっていく動きです。

ただ、これは「苦もなくうまく使えるようになる」という話ではありません。第4機能(劣等機能)が動き始めるとき、最初は過剰反応や不安定さとして現れることが多いと言われています。いつもより感情的になる。細部にこだわりすぎる。なぜかその領域だけ極端に気になる。こういった形で出てきます。

「最近の自分がおかしい」と感じている方に、わたしが返す言葉はだいたい同じです。おかしくなっているのではありません。これまで表に出てこなかった部分が、ようやく動き始めているだけです。

タイプが変わったのではなく、タイプとしての自分が広がっている。その変化を「異物」として退けるより、「どんな自分が顔を出し始めているのか」と少し観察してみることが、次の自己理解の入り口になります。

FAQ

診断結果が変わったということは、最初の結果が間違いだったのですか?

必ずしもそうではありません。「どんな状況の自分で答えたか」によって結果が変わることがあります。また、第3・第4機能が発達した結果として答え方が変化したケースも多いです。最初の結果が正しいかどうかより、「どちらがより実感に近いか」を手がかりにすることが、自己理解には役立つことが多いです。

第3・第4機能が発達したら、タイプ名は変わりますか?

理論上は変わりません。主機能と補助機能の組み合わせがタイプを定義しており、第3・第4機能が育っても、その組み合わせ自体は変わらないとされています。ただし、検査で出る「結果」は、その時点の自分の状態や文脈に左右されることがあります。

第4機能が「暴れる」というのは、どういう状態ですか?

普段使い慣れていない機能が急に動員されるとき、制御が効きにくく、過剰な形で出やすくなる状態です。たとえばINFJの場合、Se(外向的感覚)が暴れると、感覚的な刺激への過敏さや、快楽への突発的な固執として現れることがあります。本人も「なぜこんなに気になるのかわからない」と感じることが多いです。

第3・第4機能の発達を促すには、何かすればいいですか?

意図的に鍛えようとするより、人生の経験そのものが促すことが多いとされています。苦手な状況に長く置かれたり、役割が変わったりしたとき、気づけばその機能が動いていた、という形で起きることが多いです。「これをすれば発達する」という確立された方法は、研究者の間でも一致した見解があるわけではありません。

30代以降に診断結果が変わりやすいのは、なぜですか?

ユング心理学の枠組みでは、30〜40代は第3機能が発達し始める時期とされています。また、職業的な役割変化や家族構成の変化など、人生の転機が集中しやすい年代でもあります。環境の変化と機能発達が重なるため、答え方に変化が出やすいと考えられています。あくまで傾向の話ですが、年代と変化には一定の相関が見られます。

参考文献

  • Type Development — The Myers-Briggs Company 公式サイト
  • C.G. ユング 著、湯浅泰雄・定方昭夫 訳「心理学的類型」人文書院、1987年(原著1921年)
  • The Inferior Function — Personality Junkie
  • John Beebe 著「Energies and Patterns in Psychological Type: The reservoir of consciousness」Routledge、2017年