「太宰治はINFPなのでは」という見方は、太宰治の作品や逸話の端々からしばしば語られます。この記事では、あくまで公開されている作品や言動から考察できる太宰治のMBTIタイプ像と、INFPが太宰作品に強く惹かれる理由を整理します。あわせて、影響を受けたとされる又吉直樹さんとの共通点や、INFPの方に特におすすめしたい太宰治作品もご紹介します。

最初に

本稿では、なぜINFPが太宰治の作品を好んで読む傾向があるのかについて考えていきます。ご自身のMBTIタイプがまだわからないという方は、まずMirai性格診断で確認してみるのもおすすめです。

なぜ太宰治なのか

日本の近代文学には、森鴎外、川端康成、三島由紀夫、谷崎潤一郎、江戸川乱歩など、数多くの小説家がいます。

その中でも、太宰治だけがこれほど熱心な読者・ファンを抱え続けているのはなぜでしょうか。

一つの見方として、「類は友を呼ぶ」という説明があります。太宰治は、公開されている作品や逸話から考察すると、INFPに近い気質を持っていた可能性が高いと考えられます。

彼の作品や人物像には、INFPが持ちやすい長所と短所の両方が色濃く表れており、INFPらしさの度合いを1〜10で表すとすれば、9や10に近いレベルの強いINFP気質がうかがえます。

INFP気質とは何か、強すぎるとどうなるか

INFPのキャラクター

INFPは感受性が鋭く、その鋭さゆえに日常生活で疲れを感じやすい傾向があります。神経質と言われることもあります。

頭の回転が速く、先々のことまで考えられる一方で、思考が複雑になりやすく、行き着く結論がネガティブに傾きやすいという面もあります。そのため、落ち込むことも少なくありません。

基本的な考え方として、悲観的な方向に寄りやすいタイプだとも言えます。

人と対立するくらいなら、自分を犠牲にしてでも場を丸く収めようとする傾向があります。一言で言えば、内向的なオタク気質です。自分の殻にこもり、ひたすら思考を巡らせる、そんな一面を持っています。

INFPらしさが強くなるほど、自己反芻(同じことを繰り返し考え込むこと)も強くなりやすく、太宰治もその一人だったと考えられます。

太宰治が強く憧れていたとされる芥川龍之介も、公開されている言動からの考察としてINFPに近いタイプだったと推測されており、INFPがINFPに共感し憧れを抱くという構図は、今も形を変えて続いているのかもしれません。

太宰治に憧れた小説家・又吉

太宰治を軸とした「憧れの系譜」を整理すると、芥川龍之介に憧れた太宰治、そして太宰治に憧れた又吉直樹さん、という流れが見えてきます。いずれも、公開されている作品や言動からの考察としてINFPに近いタイプだったと推測される点が興味深いところです。

ここから言えるのは、INFPはINFPに強く惹かれやすいのではないか、ということです。文学というジャンル自体が、INFPの気質と相性が良いのかもしれません。

なお、この系譜に挙げた人物の多くが自ら命を絶っているのも事実ですが、それを安易にMBTIタイプと結び付けるべきではないと考えます。ここではあくまで、文学への強い憧れという共通点として捉えたいと思います。

又吉さんは芸人として活動する傍ら、小説家としても高く評価されています。

「東京百景」

振り返れば大切だったと思える、「ドブの底を這うような」青春の日々の記憶
死にたくなるほど苦しい夜には、これは次に楽しいことがある時までの

フリなのだと信じるようにしている。のどが渇いてる時の方が、水は美味い。

忙しい時の方が、休日が嬉しい。苦しい人生の方が、たとえ一瞬だとしても、

誰よりも重みのある幸福を感受できると信じている。

その瞬間が来るのは明日かもしれないし、死ぬ間際かもしれない。

その瞬間を逃さないために生きようと思う(九十九「昔のノート」より)
芥川賞受賞作『火花』、4月公開の話題の映画の原作小説『劇場』の

元となるエピソードを含む100篇のエッセイからなる又吉文学の原点的作品
-引用Amazonにて

「火花」

売れない芸人の徳永は、熱海の花火大会で、先輩芸人である神谷と電撃的に出会い、「弟子にして下さい」と申し出た。神谷は天才肌でまた人間味が豊かな人物。「いいよ」という答えの条件は「俺の伝記を書く」こと。神谷も徳永に心を開き、2人は頻繁に会って、神谷は徳永に笑いの哲学を伝授しようとする。吉祥寺の街を歩きまわる2人はさまざまな人間と触れ合うのだったが、やがて2人の歩む道は異なっていく。徳永は少しずつ売れていき、神谷は少しずつ損なわれていくのだった。お笑いの世界の周辺で生きる女性たちや、芸人の世界の厳しさも描きながら、驚くべきストーリー展開を見せる。笑いとは何か、人間の本質とは何か
-引用Amazonにて

「劇場」

高校卒業後、大阪から上京し劇団を旗揚げした永田と、大学生の沙希。それぞれ夢を抱いてやってきた東京で出会った。公演は酷評の嵐で劇団員にも見放され、ままならない日々を送る永田にとって、自分の才能を一心に信じてくれる、沙希の笑顔だけが救いだった──。理想と現実の狭間でもがきながら、かけがえのない誰かを思う、不器用な恋の物語。芥川賞『火花』より先に着手した著者の小説的原点。
-引用Amazonにて

太宰治は元々ENFPだった(?)

ENFPのキャラクター

太宰治の幼少期の逸話を見てみると、意外にも明るい一面が伝えられています。太宰治の自伝的作品とされる「人間失格」には、幼いころにわざとおどけて周囲を笑わせていたというエピソードが描かれており、もともと人を楽しませることが好きだったこともうかがえます。一言で言えば、陽気な子どもだったようです。

公開されている作品や逸話から考察すると、太宰治はもともとENFPに近い気質を持ち、思春期に経験した何らかの出来事をきっかけに社会への失望を深め、INFP寄りの気質に変化していった可能性があります。

実際、INFPの中には「子どもの頃はどちらかというと外向的だった」という方も少なくないようです。

なぜこれほど太宰に熱狂するのか

INFPは幼少期から、自分が他者と何か違うという違和感を持ちやすい傾向があります。

「なぜ他の人はこんなに自然に振る舞えるのだろう」と、何気ない会話や笑い合いのような日常のやり取りに対して、本気で疑問を抱くことがあります。

そのため周囲に溶け込もうと、道化を演じることがあります。太宰治もサービス精神が旺盛で、ネガティブな思考を抱えながらも周囲を楽しませようとする姿が伝えられています。

身を削ってでも周囲に溶け込もうとする太宰治の姿は、社会に頑張って適応しようとする自分自身と重なりやすく、INFPが強く共感する理由の一つになっていると考えられます。

太宰治に熱狂するのは一時的?

ただし、太宰治の作品に熱狂した人の多くが、数年経つと距離を置くようになるとも言われています。

社会生活を続ける中で、物事を四六時中ネガティブに捉え続けていると心が持たないと気づき、前向きな思考へと移っていく人が多いためだと考えられます。

太宰治の作品に描かれる感情は、思春期に誰もが一度は経験するようなセンシティブなものです。他の小説家にはない繊細な感受性から生まれる独特の文章には、「こんな風に世の中を感じているのは自分だけではない」と思わせる不思議な力があります。普段は言葉にできない些細な感情を、まさに文章として書き残しているのです。

太宰治の代表作といえば「人間失格」ですが、個人的には「女生徒」という作品のほうが、太宰治らしさがより表れているように感じます。

ここでは、数多くの太宰治作品の中でも特におすすめしたい作品をご紹介します。

走れメロス

人の良心とは何かを問いかける、感性寄りの作品が多い太宰治の中でも、ストーリー性の強い傑作だと思います。

学生時代に読んで、とても面白かった記憶があります。

Kindleでは無料で公開されています。

斜陽

間違いなく名作です。読み応えのある長さですが、最後の結末には鳥肌が立ったことを覚えています。

影響を受けて、以前「斜陽」を意識した小説を書いたことがあるほど、インパクトの強い作品です。

女生徒

主人公は女の子ですが、書き手は男性です。

それでも年頃の女の子の心情描写が見事で、太宰治の筆力の高さを実感させられる作品です。

個人的には、太宰治らしさが一番よく出ていて好きな作品です。

皮膚と心

皮膚のトラブルに見舞われた女性と、その夫を描いた作品です。記憶があいまいな部分もありますが、読後にほっとするような内容だったと記憶しています。

太宰治はなぜ自殺したのか

太宰治の自死をめぐっては、これまで多くの研究者や読者によってさまざまな考察がなされてきました。ただし、本当の理由は本人にしかわからないというのが実情です。

手掛かりの一つとして、太宰治が最後に発表した作品が「人間失格」であったことや、創作への意欲が薄れていたことをうかがわせる発言が残されている点が挙げられます。ここから、当時の太宰治が大きな苦しみを抱えていたことは想像できますが、それ以上の断定は避けたいと思います。

なお、本記事で触れているINFPという気質は、あくまで公開されている作品や逸話から考察できる傾向にすぎず、太宰治個人の私生活や自死の理由を説明づけるものではありません。

最後に

余談ですが、筆者自身も小説を書いています。掌編小説1編と短編小説2編からなる、計3本の短編集です。

「すれちがい」はスーパーで出会った二人の男性のとんち話、「ブンスカ」は息子の学費のためハチミツ採りに山奥へ向かう父親を描いた物語、「ガタン・ゴトン」は友人関係に思い悩む小学5年生の少年を描いた物語です。どれも気軽に読める分量になっています。

気になる方は、Kindleでの販売ページをご覧ください。

FAQ

太宰治は本当にINFPなのですか?

本人が公式にMBTI診断を受けた記録があるわけではないため、断定はできません。ただし、作品や逸話から読み取れる感受性の強さや自己反芻の傾向、周囲に溶け込もうとする姿勢などから、INFPに近い気質を持っていた可能性が高いと考察されています。あくまで公開されている言動からの一つの見方としてご覧ください。

太宰治のMBTIタイプはどうやって考察されているのですか?

本記事では、太宰治の自伝的作品とされる「人間失格」や、周囲を楽しませようとしたエピソードなど、公開されている作品・逸話をもとに考察しています。感受性の鋭さ、ネガティブ思考への傾きやすさ、対立を避けて自分を犠牲にする傾向といった特徴が、INFPの気質と重なる点が多いという見方です。

INFPに太宰治の作品以外でおすすめの本はありますか?

本記事で紹介した「走れメロス」「斜陽」「女生徒」「皮膚と心」以外にも、太宰治の作品にはINFPが共感しやすい繊細な心理描写のものが多くあります。まずは短編から手に取り、文体が合うと感じたら長編に進んでいくのがおすすめです。

参考文献

  • 太宰治『人間失格』
  • 太宰治『斜陽』
  • 太宰治『女生徒』
  • 太宰治『走れメロス』
  • 太宰治『皮膚と心』
  • 又吉直樹『火花』
  • 又吉直樹『劇場』
  • 又吉直樹『東京百景』

この記事は2019〜2020年に個人サイト『予月のMBTI研究所』で公開された原稿をもとに、読みやすさの整形と現在の編集方針にあわせた注記の追加を行って再掲載しています。文中で触れる太宰治のMBTIタイプは、公開されている作品や逸話からの考察であり、断定するものではありません。